世界文化遺産に登録されたル・コルビュジエの作品をたずねて~カップ・マルタンの休暇小屋~

2016年7月17日、ユネスコの世界遺産委員会は「ル・コルビュジエの建築作品」の世界文化遺産登録を決めました。委員会は一連の建築作品を「人類の創造的才能を現す傑作。近代建築運動の誕生と発展に関し、半世紀にわたって世界規模で起こった前例のない価値の交流を示している」と評価しました。これらは上野の森にある国立近代美術館を含む7カ国17資産で構成されています。日本の世界遺産では20件目、文化遺産は16件目で都内では初めてです。地元台東区では10年間、商店会や町会が中心となり、上野駅周辺にのぼりを立てたり、パンフレットを配ったりして登録への機運を高める運動を続けてきました。海外からの観光客がたくさん訪れるスポットである上野公園。これからはさらに世界から注目されることになりそうです。

夏休みを利用して、南フランス・コートダジュールにあるル・コルビュジエの休暇小屋を訪ねてみました。

カップ・マルタンの休暇小屋

SNCF Nice-Ville駅からVintimille行きの列車で30分で、Cap-Martin-Roquebrune駅に到着します。途中には、砂浜のビーチが綺麗な曲線を描くVillefranche sur mer、地中海の展望が素晴らしいEze、そして有名なMonaco-Monte Carloがあります。

目的地の駅に停車するかどうかを確かめてから乗車しましょう。時刻表や観光案内所で調べてから行っても変更になることがありました。車内で変更を知っても、モナコで降りて次の列車を待てば大丈夫!駅ナカのカフェでひと休みすることもできます。

海岸から山側に10分ほど歩くとSNCFニース・ヴィル駅があります。

海岸から山側に10分ほど歩くとSNCFニース・ヴィル駅があります。

車内の電光掲示板で停車駅を確かめられます。

車内の電光掲示板で停車駅を確かめられます。

カップ・マルタン駅

カップ・マルタン駅

村に通じる階段

村に通じる階段

めでたくカップ・マルタン駅に着いたら、
Avenue le Villa de Cabanon Corbusierという名の遊歩道を線路沿いに歩いて15分、眼下には美しい地中海が広がっています。

この作品は、ル・コルビュジエ自身の夏の間の休暇小屋として建てられました。
約8畳サイズのキャバノンと2×4mという仕事部屋が人間が豊かに暮らせる最小寸法として計算されたモデュロールによって設計されています。

1965年の夏の日、休暇で来ていたル・コルビュジエは「私の中には、まだ100年分のアイディアが溜まっております。それではまた」と親しい友人に告げて、海に向かいそのまま帰らぬ人となったそうです。

休暇小屋の近くのビーチではヴァカンスを過ごす人々がたくさん。

休暇小屋の近くのビーチではヴァカンスを過ごす人々がたくさん。

現地では有料の見学ツアーを実施しています。英語・イタリア語のガイド付きで15ユーロ。所要時間は2時間半。月曜を除く1日2回9時45分~と13時45分~で予約が必要です。ホームページ(http://capmoderne.com)からまたは電話06-48-72-90-53に連絡をします。また、見学受付はカップ・マルタン駅の裏の駐車場にある白いワゴン<Cap Moderne>で行っています。

見学の受付はこちらへ。

見学の受付はこちらへ。

ル・コルビュジエ夫妻が眠る墓地は地中海を臨む

Cap-Martin-Roquebrune駅から山側に上って行くと、ロクブリュンヌ村があります。城壁のある広場にはレストランがあり、海を眺めながらくつろぐことができます。

古城がありました。

古城がありました。

レストラン・レ・ドゥ・フレール

レストラン・レ・ドゥ・フレール

カフェでサングリア

カフェでサングリア

村への入り口

村への入り口

墓地の入り口には案内板があります。

墓地の入り口には案内板があります。

小石が並べてあり、一つの貝殻を押し付けたくぼみがあります。右の丸い筒はイボンヌさん。

小石が並べてあり、一つの貝殻を押し付けたくぼみがあります。右の丸い筒はイボンヌさん。

広場から城門をくぐり山の上に出ると、夫妻の眠る墓地があります。2m四方の墓石は生涯空間造型に身を捧げた彼自身の姿、そしてその横にたたずむ円柱には草花が育ち、生命感あふれる妻イヴォンヌの人間性を物語っているそうです。地中海の風を受ける高台で二人は長い休暇を過ごしているのでしょう。モダンな佇まいのお墓に手を合わせて山を降りてきました。そして、ル・コルビュジエが最後のときを迎えた海岸へと向かったのでした。

フランスを中心として、世界中にル・コルビュジエの建築作品があります。単なる建築物としてだけではなく、人々が快適に過ごせるように考えた集合住宅、そして都市計画まで大きな視点から構想されたものがたくさんあります。21世紀の今見てもモダンな佇まいの作品の数々。人類の未来を考えていく上でも、彼の偉業を実際に見てそこから学ぶという姿勢が大事なのではないでしょうか。本物に出会い旅を続けて生きたいと思います。

 

世界文化遺産に登録されたル・コルビュジエの建築作品

1. サヴォア邸と庭師小屋(フランス)
2. マルセイユのユニテ・ダビタシオン(フランス)
3. サン・ディエの工場(フランス)
4. ロンシャンの礼拝堂(フランス)
5. ラ・トゥーレット修道院(フランス)
6. ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸(フランス)
7. ぺサックの集合住宅(フランス)
8. ポルト・モリトーの集合住宅(フランス)
9. カップ・マルタンの休暇小屋(フランス)
10. フィルミニの文化の家(フランス)
11. レマン湖畔の小さな家(スイス)
12. イムーブル・クラルテ(スイス)
13. 国立西洋美術館(日本)
14. バイセンホフ・ジードルングの住宅(ドイツ)
15. ギエット邸(ベルギー)
16. クルツェット邸(アルゼンチン)
17. チャンディーガールのキャピトル・コンプレックス(インド)

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